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Mahler
Symphony No.7
交響曲第7番
第1楽章で用いられるテノールホルン[1]
第1楽章 Langsam (Adagio) – Allegro risoluto, ma non troppo
序奏は弦楽器による引きずるようなリズムが奏でられ,その上でテノールホルンによる主題が「自然が咆哮する」ように演奏される.テノールホルンは第1楽章のみ登場するが,この楽器の音はとても印象的であり独特な効果をもたらしている.木管が行進曲調の主題を出し,4度下降の動機の提示によりテンポを速め,ホルンとチェロにより第1主題が示される.この主題は交響曲第8番の冒頭主題と親近性を持つ.第2楽章ではヴァイオリンが叙情的かつ印象的な主題を奏で,序奏での木管の行進曲調の主題が現れて提示部を締めくくる.展開部は長大なもので,各動機や序奏の主題が様々に展開されめまぐるしく変化し,音楽が力を増し最高潮となったところで急激に落ち込み再び序奏が奏でられる.トロンボーンの独奏に続き,音楽の頂点で第1主題が再現される.再現部は劇的に変化していき,コーダは華やかなハ長調となり明るく結ぶ.
この楽章はオーケストラのアンサンブルが非常に難しく,かなり精神をすり減らすが,音楽の密度が凄まじくとても聴きごたえのある楽章である.ただ少し曲が長い.
第2楽章 Nachtmusik I. Allegro moderato
楽章全体として長調と短調が入り混じった不思議な世界が展開され,夜の森林のような独特の雰囲気を感じさせる.曲から自由な想像をさせるものがマーラーの描く不思議な世界なのだ.冒頭は2本のホルンによる掛け合いが行われ,長調から短調に動機を経て転じる.主部は長調と短調を行き来して定まらない.第2主題は変イ長調でチェロにより示される。中間部はへ短調でオーボエが哀愁じみた旋律を奏でる。この楽章ではカウベルが効果的に使用され、表面的には牧歌的な音楽ではあるが、裏では影の存在を示唆しながら行進曲風に音楽が進んでいく。
第1楽章とは各楽器の使い方も異なり、音の変化がとても感じられる。音楽としても聴きやすくホルンがとても良い味を出している。
スイスカウベルとカウベルをつけた牛[2][3]
第3楽章 Scherzo. Schattenhaft
この楽章の指示に「影のように」とあり、特殊な楽器の奏法により幽霊が飛び交うグロテスクな音楽また死者によるワルツを連想させる。曲はニ短調で始まりオーボエが明るい主題を提示するが、再びヴァイオリンが短調に引き戻す。特殊な奏法として、弦楽器ではバルトークピチカートやグリッサンドを多用する。打楽器ではティンパニに木製のマレットを使うよう指示するなど、マーラー独特の演出が際立つ。
第4楽章 Nachtmusik II. Andante amoroso
この楽章も2楽章と同様に「Nachtmusik」であるが、雰囲気は打って変わりセレナーデ風の音楽となっている。室内楽的な響きによる穏やかな音楽にギター・マンドリンが加わることでよりセレナーデの雰囲気を感じる。ホルンによる主題、中間部のチェロとホルンなど各モチーフはとても単純なものであるが、それらが複雑に絡まりあうことで非常に味わい深い音楽となる。本楽章はクラリネットのトリルで閉じられるが、最後の小説に「消え入るように(死に絶えるように)」と指示しており、4楽章で死を連想させ5楽章の音楽へと繋げる。
この曲ではホルン以外の金管楽器を使わず室内楽的に演奏され、交響曲5番の4楽章のような雰囲気を感じさせる。奇数楽章に激しい音楽や華やかな音楽が多い為、対照的な音楽でとても聴きやすい。
クラシックギターとマンドリン(ナポリ型マンドリン)[4][5]
プラッテングロッケン(マーラーは低音の鐘と指定している)[6]
第5楽章 Rondo-Finale. Allegro ordinario
ティンパニの強奏に導かれトランペットとホルンが華やかなハ長調の主題を奏でる。主題は楽章中に変奏されながら計7回再現される。この楽章には様々な解釈があるが、5楽章の速度指定がアレグロ・オルディナレオということや弦楽器の扱いなどを見ても、バッハを手本としたマーラーの作曲技法を注ぎ込んだ純音楽であると捉えられれば、この楽章の真意も見えてくるのではないか。この楽章の主題はワーグナー作曲のマイスタージンガーの引用との指摘もあるが、第1楽章の主題の変形ともされている。第1楽章の主題は短調から長調へと転じて行き、再び冒頭部分に戻る。音楽は祝祭的なものになり、荘厳に鐘が鳴らされ、最後に第1楽章の第1主題を示し全曲を明るく結ぶ。
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